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2007年6月 4日 (月)

遠い太鼓/村上春樹~異国で考えること~

日本に住んでいると、当たり前のようにわたしたちは考える。

これはこうあるべきだ、これは普通こうなる、これはこんなときのためにこうしておこう。

そんな日常に疲れたときに人は旅に出る。海外に出たとき、普通のことが普通でないことに当たり前のように気づく。だがそれは気づくだけ。やがてもどるべき自分の国では普通のことが待っているから。

作者は旅に出る。長い旅に出る。正確に言うとそれは「旅」と「日常」の中間のような道程である。そこで生活はする。アパートに住み、料理もつくり、友人をつくる。しかし税金は払わず、コミュニティには属さず、しっかりとした自分の世界を保ちながら、仕事である小説の執筆を進めていく。

作者が発見するもの。どうでもいいような些細な日常の出来事。ギリシアで、イタリアで、イギリスで、旅のような日常の中でつむぎ出されていくエピソードたち。作者はその日々を軽やかにつづっていく。

どこにでも人はいる。生活がある。核とした文化的背景の前にしっかりと立ち上がる人物。肩の凝らない文章が瑞々しく苦々しく香ばしい日々の記録を伝えてくれる。「ノルウエィの森」「ダンス・ダンス・ダンス」の頃、彼が何を想い何に憂いていたのか、その息遣いが伝わってくる記録である。

遠い太鼓

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私が住んでいるところの空は色が淡い。 晴天も、曇った日もそして夕暮れの空も。 最 [続きを読む]

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