空白の叫び/貫井徳郎~冗長なる濃厚~
読み終えるとかなりの満腹感。もうおなか一杯。もう食べれません。質も量もたっぷりと。空腹でない方、繊細な味覚の持ち主の方にはあまりお薦めできない。おそらく途中下車をなさることになるでしょう。
主人公は三人。少年たち。彼らが凶悪犯罪を犯すまで、少年院での収容生活、その後の彼らの足取りを軸に物語がすすむ。第一の成功点は彼らの人物造形。徹底したフィクショナリズムにより小説的な存在となった少年たち。そして第二に彼らを犯罪に追い込む大人たちと社会の通念。あくまでも無意識に少年たちの心の襞に未来への膿を溜めていく。第三は作者のお手の物。道中のプロットに伏線を振りかけ、最後にばらす事でのカタルシス。
第三の成功点にこれまでの作品では特化してきた作者が、故意にか偶然か、別視点での展開に拡がりを持たせてきているように感じる。この読後感はしいていえば桐野夏生に似ているか。まだまだ彼女に及びはしないが、男の立場からは男性の視点での桐野的なる世界があれば覗いてみたいのもまた確か。次回作を注意して見守りたい。
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