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2007年2月25日 (日)

孤宿の人/宮部みゆき ~怜悧な時代~

宮部みゆきの時代小説。時代は江戸。ただし舞台は江戸ではない。瀬戸内海を思わせる島々で、少女二人を中心に物語は進む。

いきなり起こる殺人事件。すわミステリーかと意気込む読者の肩をすかし、下手人はすぐに判明する。しかし事件はそもそもないものに。「揉み消し」に納得できない少女、理解できない少女。その背景にあるのは時代の持っていた社会の仕来たりの悲しさか。誰もが納得できないのに、誰もが受け入れざるを得ない時代のルール。その仕来たりを作り上げた江戸から送られてきた一人の罪人の老武士の扱いで、小さな島では悲しい出来事が続いていく。あるものは人災、あるものは天災。

人は死ぬ。やがていつかは必ず。しかしできるものならまっとうしたい。親より授かったこの人生を。しかし理不尽な形で奪われていく命。一人また一人。街が崩れていく中ではじまる罪人と少女の交流。最後の一歩で踏みとどまる命。その生の眩しさと尊さよ。生を授けていく人の心よ。

2007年2月 8日 (木)

日暮らし/宮部みゆき ~あたたかな視線~

「ぼんくら」の続編。「ぼんくら」を読んだ人にはそれで充分魅力は伝わる。逆の順序で読んでも悪くはないが、やはりちょっともったいない。
まっとうな暮らし。それを日々繰り返し積み重ねていくこと。簡単なように見えて、簡単でない。なかなかうまくできないのが人間の性。
けれどやはりまっとうな暮らしはは悪くはない人生だ。そう語りかける作者のあたたかい視線がここちよい。江戸という時代背景を借りて、人情の上にサスペンスを展開し、卓越したストーリーテリングで物語は進む。

利発で事件の読みに才覚を発揮する美少年。お人よしの中に強さと厳しさを併せ持つ同心。口は乱暴だがどうしようもなく世話好きで懐が深いおかみ。線は細いがやさしく実直な青年。さまざまな事件が彼ら彼女らが織り成す暮らしの上に降りかかっていく。
作者の時代小説にはパターン化という批評もあるが、あえてこう解釈したい。何度でも何度でも、作者はこのテーマで、この形で、どうしても伝え続けたいものがあるのだと。その想いが続く限り、私たちは彼ら彼女らの「日暮らし」の様子を読み続けたいと思う。

2007年2月 6日 (火)

外交敗北―日朝首脳会談の真実/重村智計 ~勝者は誰か~

我々は通常信じている。外交の場で成されていることは正しいと。報道されるものが全てであると。議員や官僚たちは国のため最善を尽くしていると。それはいずれや我々の生活に還元される日が来るであろうと。

否。外交の表も裏も知り尽くした筆者は述べる。外交は国のためではなく、国民のためのものであるべきであるが、その理想に追いつかない現実があると。その差を埋めるための欺瞞と虚構の内実を強く語る。

敗北というからには勝者がいる。あの日本中が湧いたかの国への電撃訪問時、我々の国はどうであったのか、かの国はどちらであったのか。さらに以前、我々が選んだはずの人たちが行ったあまりにも情けない振る舞い、外交とも呼べないお願い、依頼の数々。

当たり前のことであるが、外交とは交渉である。ネゴシエーション。政治の世界の中では、外交がもっともビジネスと近い方法論で動いている。勝者があり敗者もいる。時にそれは入れ替わる。

交渉で重要なのは何か。ひとつは交渉の継続性であり、それが信用を生む。馴合いを避けながらも、重ねた信用に勝る価値は少ない。そう考えると窓口は一つにしぼるべき、複数のチャンネルが混乱を生じる可能性に気づく。議員外交という言葉がありえないことを知る。そしてはげしく憤り、憂う。その積み重ねで膨大な時間と運命を失った人たちがいることを。

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