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2006年12月23日 (土)

かえっていく場所/椎名誠 ~同年代~

同世代ではないけれど、年代ごとの想いの特色が深く現れる作家である。彼の二十代の突進生活は「哀愁の町に霧が降るのだ」、「新橋烏森口青春篇」に、三十・四十台の成熟と安定は「銀座のカラス」「岳物語」に、そして五十台の憂鬱が本書に描かれる。

一人から夫婦へ、夫婦から家族へ、サラリーマンから作家へ、作家から映画監督へ、拡がり続けてきた人生の中で訪れつつある喪失感。子供は家を発ち、夫と妻は各々旅に出る。友は死を迎える。得るものよりも失うものが多くなる日々。新鮮さよりも継続するなじみの世界の方が心地よく感じる日々。

小説というより、エッセイというより、私小説。したがって作家の私生活に興味のない人には、単なる老年一歩手前の中年男の戯言にしか読めないか。しかし作者は二度と「岳物語」は書けないし、「銀座のカラス」は書けない。今しか「かえっていく場所」は書けなかったのは確かである。彼の五十台の日々が苦悩とともに詰まっている。彼の年代でしか語れなかった事は彼の年代でしか理解できないか。私が彼の年齢になったときこの小説をどう感じるか。

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