終末のフール/伊坂幸太郎 ~揺さぶられる世界~
「終末」という言葉、日常生活ではあまり用いられない。小説の中でもSFなど、展開の大きな世界のお話で語られることが多い。しかし「終末」をむかえる前には必ず人がいる、人の日常がある。隕石衝突というSF的な設定の中で語られる、ふつうの人々の日常のお話である。
十数年前に核戦争後の世界をモチーフにした演劇が流行ったことがあった。そこで表現されていたのか限りない喪失感、語られたのは失った後にわきおこるささやかな希望。
地球に衝突する隕石を回避するために宇宙船にて飛び立つヒーローの映画もあった。表現されたのは人が人を救う勇気。世界愛。
この小説の登場人物たちはあくまでも失われていく世界を見ながら、世界に寄り添い、日々を過ごす。普通の日常が続いていく。何かが起きるか、いや何も起きない。朝起きる。食事をする。人と話す。走る。トレーニングをする。遊ぶ。サッカーをする。妊娠して悩んだりする。家族がいる人もあり、失った人もいる。子は親に反抗し、夫は失った妻を想い行動し、ひとりの人は仲間を求める。
「明日世界が終わるとしたら、あなたの生き方は変わるのですか?」
変わりたいのがほとんどの人にとって当たり前、だから人は争う、叫ぶ、逃げる、襲う。そんな中で数年も生き抜いた場合に何を人は思うのか。
実は人は変わらない。変わるほど強くはなれない。身近な人を大切に思い、自分をなぐさめ、時に気晴らししながら、人は生きていく。当たり前の結論だがそこにたどりつく。せつなさと悲しさとあたたかさが同居するラストシーンが、そう語りかけてくる。

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