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2006年11月18日 (土)

センセイの鞄/川上弘美 ~寒い日のあたたかい部屋で~

元センセイと元教え子のツキコさんの恋。

センセイは背筋が伸びていて、言葉遣いがていねいです。歌をたしなみます。手酌が好きです。お酌が上手なのです。奥さんがいましたが出奔しました。国語の先生でした。いつも鞄を持っています。山登りにも持って行きます。

ツキコさんはどちらかというと控えめな方でしょうか。マイペースです。お酒はけっこういけます。恋をしたことも何度もあります。でも独身です。仕事をしています。

居酒屋のサトルさんの店で二人の恋はすすみます。お酒を飲みます。食事をします。やがてサトルさんに誘われきのこ狩りにいきます。花見にもいきます。すこしづつふれあう時間が長くなります。

恋はいくつになってもはがゆいものなのでしょうか。すくなくともこの二人はとてもはがゆいです。センセイにライバルが現れてイライラしたり、しばらく会わない時期が続いたり、でもやっぱり。好意をいだいてくれる同級生に誘われたり、センセイの奥さんに嫉妬したり、でもやっぱり。そのせつなさやうれしさが、ゆるやかな文章によりゆるやかに伝わってきます。

そして時はいつでも残酷です。センセイは常に年上です。ツキコさんも歳をとってきましたがセンセイはもっと歳をとりました。だからセンセイは先にいきました。ツキコさんが行くのはもっとあとでしょうか。でもセンセイの鞄があります。いっしょにすごした時間があります。時間を鞄の中に入れておけば、きっといつでも会えると思うのです。

とてもシンプルなお話です。あらすじにすれば数行でおわり。たいした事件は起きないけれど、たいした山場はないけれど、ゆっくりと、ひとりで、寒い日に部屋の中であたたまりながら、読みたい小説です。

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コメント

こんばんは、いおなおさん。
TB&コメントありがとうございました。
時々流れが速くなったり、足踏みしたりするけれど、センセイとツキコさんの日常はとってもゆるやかな流れの中にあって、それがとくとくとこちらにも流れ込んでくる感じでした。
ほんと寒い季節にはうってつけの、ぽかりと温かな物語でしたね。

コメント・TBありがとうございます。寒い冬の朝に読みはじめて、徐々に日がさしてきて、すこしあたたかくなったころに読み終りたい小説と思いました。あと一月待てばよかったかな?

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センセイの鞄 駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。 「BOOK」データベースより 淡々とした想いに揺れながら、ゆったりと流れていくセンセイとツキコさんの時間が、独特の淡い文章で優しく描かれている。... [続きを読む]

» センセイの鞄 [川上弘美] [+ ChiekoaLibrary +]
センセイの鞄川上 弘美平凡社 2001-06 ツキコと、高校時代の国語のセンセイの恋の物語。 ツキコさんは38歳、センセイはもうご老体。最初は全然「恋の物語」じゃなかったのですが、みるみるうちに恋の物語になりました。そうか、恋ってこういうものだよね…と思ってみたり。のんびりとしたセンセイとツキコさんの会話、とても独特で、とてもステキでした。万事騒がしい自分。こうはなれない…。ここでは、時間がとてもゆったりながれているみたいでした。 まだ二人が両思い(?)になる前、二人で島に行くシーン... [続きを読む]

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