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2006年9月13日 (水)

ねじの回転/恩田陸 ~五感で語りかける小説家~

作家の個性とは何か。ストーリーか、人物の描写か。

どんなストーリーでも、どんな描写でも立ち現れる作家の個性。それが現在とシンクロし、僕らの心を討つ。討たれた僕らはしばし現れる感情に心を酔わせ、やがて心を静めていく。

五感。視る、聴く、触れる、味わう、嗅ぐ。小説は(文章は)視る上に言語という二次的な解釈を必要とする本来は間接的な芸術。しかしすぐれた小説(文章)ではぼくらはその「空気」に触れ、感じることができる。すぐれた小説家とはどんな小説でもそのすぐれた「空気」を作家の個性として創り出せる人のことをいう。

恩田陸の小説には彼女の「空気」が満ちている。手法はさまざまであり、ミステリーから青春小説、今回はSFと、手をかえ品をかえ僕たちに語りかける。品はかわっても彼女の空気は変わらない。

正直この小説では人物描写には不足あり、2・26という歴史を扱うがゆえにやや構成に臆病な点が散見する。ストーリーとSF的描写もやや無理があるか。しかし彼女の創り出す空気には狂いはない。その空気があの時代と僕らの今と、未来の想像をひとつにつなげている。少しでも希望を見出したい。人間に希望を見出したい。そう感じていたいラスト。最後まで読んでよかったと思わせる。

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