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2006年9月12日 (火)

小説家/小林紀晴 ~てらいなく~

文章を書くということ。小説を書くということ。

その二つには大きな隔たりがあり、その一線を越えることができた人、できない人。この本に登場する小説家たちは前者のはず。作者は何のてらいも躊躇いもなく、無垢のまま、自分の言葉で語りかける。そのてらいのなさが微笑ましくありうらまやしく頼もしくもあり、小説家たちは言葉に反応していく。

ところが小説家により作者の言葉を受け止めるもの、受け止めきれずにいるもの、見事に分かれるのはなぜか。既に大家と呼ばれてもおかしくない、山田詠美・椎名誠・村上龍は作者のてらいのなさを素直に受け止め、率直な言葉を返していく。一部の新進の作家はてらいのなさに戸惑うのか、自らにしか通用しない言葉を繰りかえし、僕たちのもとには何も届かない。

作者は写真家でもあるがゆえ、小説家の心象を切り取るすべには(おそらく無意識のうちに)慣れている。そして読者を恐れない。作者の想いはあくまでも小説家たちにある。作者の向こう側に読者を見ることのできる小説家たちだけも読者を恐れず、作者をそして僕たち読者を切り取ることができる。

僕らは切り取られる。そんな言葉を待ち望んでいる。写真の対象物となり、自分をあからさまにしてくれるような言葉を。そんな言葉をつむぎだせるのは誰か、なぜか。作者の無垢とてらいのなさが、写真がそこに在るように語りかけてくる。

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